自家不和合性に関わるリンゴ雌ずいのS遺伝子群の解析を行い、以下の成果を上げた。 リンゴ栽培種のS遺伝子解析 1.リンゴ栽培種'旭(McIntosh)'の雌ずいから新規S遺伝子'Si-RNase'を単離し、その全構造を明らかにした。2.単離したSi-RNase遺伝子構造に基づき、PCR-RFLP解析法によるSi-allele同定法を確立した。本法により新たにリンゴ6栽培種のS遺伝子型を同定するとともに、これまでに開発してきた各S-allele特異的PCR-RFLP解析法により、新たにリンゴ19栽培種2系統のS遺伝子型を明らかにした。3.日本で同定されたS-allele(alleleはアルファベット順に表記されている)と西欧で同定されたS-allele(alleleは数字順に表記されている)の対応関係を明らかにした。 リンゴ野生種のS遺伝子解析 リンゴ野生種Malus transitoriaの雌ずいから単離されたS遺伝子'Sg'-RNase'は、'印度'の'Sg-RNase'と自己、非自己の認識に関わるとされるRHv領域内で1アミノ酸のみ異なっていたことから、このわずかな違いで自他認識に十分かどうか調べた。両者の交配実験により、Sg'-alleleはSg-alleleによって拒絶されたことから、両alleleは同じalleleとして挙動していることが明らかとなった。このことから、1アミノ酸の違いでは自他認識には不十分であることが明らかとなった。
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