研究概要 |
開花後に紫外線(UV)の受光に応答して濃色化するバラ色変わり品種のFloribunda系(中輪房咲種)"絵日傘",およびClimbing系(蔓性品種)"Charleston"を用い,蕾から完全開花に至る開花ステージをおって,紫外線光質(UV-A:320〜400nmおよびUV-B:280〜320nm)が花器の成長,および花弁に含まれるアントシアニンの生合成に及ぼす影響を考察した.また,同品種バラの花弁培養カルスを用いて,イチゴのアントシアニン蓄積能をもつ着色カルス培養系より得たコンディショニング培地との組み合わせにより,UV照射下でアントシアニン色素を効率的に生合成するカルス培養系統を得,In vivo同様にIn vitroでのアントシアニン生合成に関する分子生物学的な制御機作を調べた. 開花過程においては,花器の成長に伴って紫外線の受光に応答して生合成が促進される主要なアントシアニンを,シアニジン3,5-ジグルコシド(Cy-3G5G)とシアニジン3-グルコシド(Cy-3G)であると同定し,さらにそれらの生合成に関与する遺伝子の発現を逆転写-PCRによるディファレンシャル・ディスプレイ法で解析し,カルコンシンターゼ遺伝子(CHS)と相同性の高い遺伝子の発現が特異的に誘導されていることを示唆した.そこで,バラ本品種のCHSのクローニングと,紫外線の受光下でのCHSの発現制御に関わる遺伝子(転写)因子を明らかにするために,cDNAライブラリーを用いたサブトラクション-PCR法による特異的な関連遺伝子の発現を調査した. カルス培養系においては,植物成長調節物質,糖濃度,光質,培地浸透圧などの至適条件を調べ,アントシアニン生合成能の高い培養細胞系統を選抜した.
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