研究概要 |
開花後に紫外線(UV)の受光に応答して濃色化するバラ色変わり品種の"絵日傘"を用い,蕾から完全開花に至る開花ステージをおって,紫外線光質(UV-A:320〜400nmおよびUV-B:280〜320nm)が花弁に含まれるアントシアニンの生合成に及ぼす影響を考察した.開花過程においては,花器の成長に伴って紫外線の受光に応答して生合成が促進される主要なアントシアニンを,シアニジン3,5-ジグルコシド(Cy-3G5G)とシアニジン3-グルコシド(Cy-3G)であると同定し,さらにそれらの生合成に関与する推察される遺伝子の発現を逆転写-PCRによるディファレンシャル・ディスプレイ法で解析した. また,紫外線の受光に応答して葉にアントシアニンの生合成が見られる赤葉系のリーフレタスを人工光下(白色蛍光灯)で栽培し,紫外線(UV)波長を異にする紫外線ランプ(BLB灯および健康線灯)を補光することにより,UV-A波長域(320nm以上)およびUV-B波長域(290-320nm)にそれぞれ応答して蓄積されるアントシアニンについて調べた.紫外線波長への応答特異性に関しては,UV-AとUV-Bで葉におけるアントシアニンの蓄積に差異はなく,どちらもUVを受光しない場合に比べて有意に蓄積が増大した.UV-Bの照射強度(0.5〜1.0W/m^2)には同程度に応答して,クロロフィルおよびアントシアニンの蓄積が見られた.アントシアニンの蓄積は,白色光の同時照射を伴わないUV-Bのみの受光下で最も増大し,白色光が共存することにより紫外線の受光に対する感受性が変わることが示唆された.
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