研究概要 |
前報では原種の形態分析の結果から,ヤマザクラ系と他種に分かれた。また林は,3グループ,久保田は6グループに分けている。本報では8種の日本原種,ヤマザクラ,オオヤマザクラ,カスミザグラ,オオシマザクラ,チョウジザクラ,マメザクラ,キンキマメザクラ,エドヒガンと外国種のカンヒザクラ,シナミザクラおよびサクラ節に近いミヤマザクラの11種の遺伝子関係を、プライマーを変えてRAPD分析した。プライマーはオペロン社のA列の6種,B列の5種の計11個とした。PCRは94℃3分,DNA開裂,40℃アニーリング,72℃伸長反応とした。その結果148バンドが得られ,多型バンドは108本であった(多型73%)。ただし,これらのバンド(300bp-1000bp)は鮮明なものに限った。これらのバンドから種間の類似値を求め,樹形図を作製した。これによるとオオヤマザクラ,カスミザクラ,オオシマザクラが近く,チョウジザクラが続いた。またマメザクラとキンキマメザクラ同士はごく近い関係にあった。またエドヒガンは前6種とやや離れた。ヤマザクラは7種の日本ザクラと等距離をおいて結ばれた。これは日本のサクラ原種がヤマザクラから発達分化した説を支持している。外国のカンヒザクラ(台湾,南中国産)とシナミザクラ(中国産)およびミヤマザクラは,ヤマザクラ群と異なる群に入り,日本産サクラと明らかに異なった。この結果と形態による分類(小野)を比べると,ヤマ系とマメ・エドヒガン系に分かれたところは似ていた。しかし外国からのカンヒザクラやシナミザクラも国内産と混在したため,形態だけの分類だけでは不十分であり,今回のDNAによる分類が妥当と思われる。
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