スカシユリ品種のモントレー(ピンク花、斑点有り)とコネチカットキング(黄花、斑点無し)の交雑に由来するF.集団96個体を利用して、分子マーカーを用いた連鎖地図を作成した。その結果モントレーでは88のマーカーからなる25の連鎖群が、コネチカットキングでは101のマーカーからなる21の連鎖群が得られ、連鎖群の全長はそれぞれ900、1100cMであった。次に連鎖地図作成に用いたF.集団における花弁のピンク色と斑点の発生の各形質を調査して、これらの形質を支配する遺伝子座を連鎖地図上にマッピングした。花弁のピンク色と斑点はいずれもアントシアニン色素の一つであるシアニジンルチノシドから成る。花弁のピンク色はF.集団で1:1の比で分離したことより単一の遺伝子に支配されていることが解った。マッピングしたところモントレーの第一連鎖群のマーカー:ASR35-180とP506-40の間にマップされた。この遺伝子座と連鎖するDNAマーカーはマーカー選抜に利用可能である。花弁に発生する斑点の数はF.集団において明瞭な分離を示さず連続分布したことより、複数の遺伝子に支配されていると考えられた。そこでQTLマッピングを行ったところ、斑点の発生に関わる2つのQTLsがコネチカットキングの第1連鎖群と第18連鎖群にマップされた。中でも第18連鎖群のQTLは単一で全表現型変異の64%を説明する大きなQTLであり、主働遺伝子として機能していると考えられた。さらに、作成したcDNAライブラリーからシアニジンルチノシドの生合成に関わると考えられる遺伝子を単離した。その結果、3種類のCHS、1種類のDFRおよび1種類のMybを得た。これらの遺伝子をプローブに用いて発現解析を行ったところ、2つのCHSとDFRとMybの発現は花弁のシアニジンルチノシドの発色パターンと良く一致し、花弁における色素発現と密接に関連することが示唆された。もう1つのCHSは葯で強い発現が認められ、この組織で色素発現に関与していると考えられた。今後、単離した遺伝子と連鎖地図にマップした遺伝子座との関連を調査する。
|