1.目的 桜島ダイコンは世界一巨大なダイコンである。主な生産地は鹿児島県の桜島だが、そこでは現在、わずか11戸の農家で維持されている。それぞれの農家が狭い畑で自家採種をして品種を維持しているが、当然、遺伝子プールは小さいと考えられる。しかし、ダイコンは内婚弱勢が強く、自家受精を3代続けると、非常に植物体は小さくなり、弱勢となる。遺伝子プールは小さいにも拘らず巨大性を維持出来る遺伝機構とは何か、それを明らかにするのが本研究の目的である。 2.結果 (1)個々の農家は栽培、採種の両面で方法が異なる。雄ダイコン、雌ダイコンと称される、形質の異なった株、および両者の様々な中間型があり、それらの間で放任受粉させ、採種している。そのため、雌ダイコンと中間型を受粉させる農家から分譲を受けた種子集団を栽培し、平成11年春、雄ダイコン、雌ダイコン、中間型を判定し、それらの間で自殖・交配を行い、翌年も、その後代で同様に行った。収穫調査は平成12年と13年1月に行った。 (2)自殖、交雑の第1代では自殖が農家採種集団(対照区)より収量低く、交雑はより高収量であった。第2代では雌ダイコンの自殖が対照区より1/2減収となり、雄ダイコン自殖はほぼ同じ、両者の交雑は対照区より収量が上回った。 (3)雄ダイコン、雌ダイコンの自殖後代には様々な頻度で異なった「性型」が出現した。 (4)以上の結果、桜島ダイコンは雑種集団であり、雄ダイコンは集団の強勢を支える一因であることが推察された。今後は、「性型」と関連するDNAマーカーを検索し、他殖集団での遺伝解析および品種維持、育種に役立てたい。
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