1.カラタチの実生樹とイチジク、ブドウの挿し木樹を用いて、塩処理(NaCl)を行った結果、葉と根のNaとCl含量は処理濃度に対応して増加した。カラタチでは、塩ストレスによって根、葉にプロリンベタインが増加する傾向がみられ、とくに、その影響は根で顕著であった。イチジクとブドウの葉の蒸散量と光合成速度は塩ストレスによって明らかに低下し、蒸散量に関係する気孔開度も小さくなった。新根の細胞構造にも塩処理の影響がみられた。とくに高濃度処理では皮層が剥離し、根冠層が薄くなった。頂端分裂組織から基部側の細胞は塩処理によって肥大し、細胞核が小型化するとともに液胞化がより早く進行する傾向がみられた。 2.ビワの葉と根のソルビトール含量は土壌の乾燥処理によって明らかに増加した。とくに根のソルビトール含量の増加が著しかった。 3.果樹の菌根形成ならびに栽培土壌中の菌根菌の生態特性を調査した。調査したすべての果樹のうち、ブルーベリー以外の根には樹枝状体やのう状体が観察されたことから、アーバスキュラー菌根菌と共生していることが確認できた。ブルーベリーはアーバスキュラー菌根菌とは別の菌根菌の感染とみられ、のう状体はなく、皮層細胞全体に菌糸が詰まった状態であった。今回は、菌根菌と菌根形成を把握するのにとどまり、果樹の種類別土樹環境の相違と菌根形成との関係は今後の課題である。
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