クライマックテリック型果実のメロンとノンクライマックテリック型果実のキュウリの果実追熟に伴う1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)合成酵素(ACS)遺伝子の発現調節機構の相違を明らかにするために、それぞれ2種類のACSのゲノムDNA配列(約2kb)をインバースPCR(IPCR)法によって決定した。メロンのACS遺伝子(CMe-ACS1とCMe-ACS2)は、エキソンとイントロンのサイズおよび位置、制限酵素地図、エキソン・イントロン・転写開始部位近位の5'上流域・スプライシング部位の塩基配列において、それぞれ対応するキュウリのACS遺伝子(CS-ACS1とCS-ACS2)とよく似た構造をしていた。サザンブロッド解析の結果、各ACS遺伝子はシングルコピーとして存在すると考えられた。CMe-ACS1とCS-ACS1の一過的プロモーター活性をβ-グルクロニダーゼ(GUS)をレポーター遺伝子として両果実の成熟果肉を用いて調べた。メロン切片では、CS-ACS1(-2098〜+42)ならびにCMe-ACS1(-2187〜+67)のプロモーター発現によるGUS活性が検出され、強力なエチレン作用阻害剤である1-メチルシクロプロペン(MCP)処理によって減少した。しかし、キュウリ切片においては、CS-ACS1:GUSのみでGUSが発現し、活性はMCP処理で減少し、プロピレン処理ではコントロールと同レベルであった。以上の結果から、CS-ACS1のプロモーターがメロン成熟果肉組織で発現する潜在能力をもつこと、メロンとキュウリの成熟に伴うエチレン生合成の相違はACS1プロモーター活性によるものではなく、両者のトランス因子合成能の相違によることが示唆された。
|