オーキシンと類似の作用を強力に発現することによって植物を枯らすいわゆるオーキシン型除草剤の作用には、除草剤によって生成が誘導されるエチレンの関与が推定されているが作用機構の分子レベルでの解明までは至っていない。本研究はオーキシン型除草剤の作用プロセスの全体像を解明すること、および、エチレン生合成遺伝子の発現誘導とそのオーキシン型除草剤の作用への関与機構を明らかにすることを目的としたものである。 平成11年度においては除草剤キンクロラックによるエチレン合成系の活性化とその要因について解析した。キンクロラックを感受性植物の葉片から吸収させると葉片からのエチレン発生が顕著に促進され、生成量に応じてクロロフィルの分解に伴う葉片の白化が見られたが、これらは光の照射下でのみ起こった。この光の下でのみのエチレン発生促進と作用の発現という現象は、キンクロラックをトウモロコシ個体の根から吸収させた場合にも確認された。また、葉片からのエチレンの発生は、トウモロコシの生育期温度にも大きく影響を受け、また、薬剤処理時に温度を上げると急激に増加した。これらのことからキンクロラックによるエチレンの合成促進は光の関与する反応で、高温下では生合成系の酵素量の増大が起こっている可能性が示唆された。エチレン生合成のキー酵素の一つであるACC oxidaseの活性の誘導を調べた結果、キンクロラック処理によるこの酵素の活性の増加は見られなかったため、ACC synthaseなどの酵素について検討を行っている。
|