オーキシンと類似の作用を強力に発現することによって植物を枯らすいわゆるオーキシン型除草剤の作用には、除草剤によって生成が誘導されるエチレンの関与が推定されているが、作用機構の全容解明までは至っていない。本研究はオーキシン型除草剤の作用プロセスの全体像を解明すること、およびエチレン生合成遺伝子の発現誘導と除草剤の作用への関与の機構を明らかにすることを目的としたものでる。 作用機序が明らかでないオーキシン型除草剤キンクロラックについて、エチレン合成系の活性化とその要因について解析した。キンクロラックをトウモロコシの根から吸収させるとエチレンの発生が顕著に促進され、クロロフィルの分解に伴う葉の白化と水分含量の減少が見られたが、これらは光の照射下でのみ起こった。この作用への光の必要性は他のオーキシン型除草剤ではみられず、キンクロラックに特徴的であった。また、エチレンの発生はトウモロコシの生育期温度にも大きく影響を受け、また、薬剤処理時に温度を上げると急激に増加した。エチレン生合成のキー酵素であるACC synthaseとACC oxidaseの活性誘導を調べた結果、キンクロラック処理植物でACC synthaseが、光照射下でのみ顕著に誘導されることが明らかとなった。これらのことからキンクロラックにより光の下でこの酵素が誘導されることがエチレン発生の要因と考えられ、さらに、酵素活性の増加パターンから障害誘導型のACC synthaseが誘導されている可能性が示唆された。現在、このことを確かめるべくACC synthase遺伝子の発現解析を行っている。 この一連の研究により、オーキシン型除草剤として分類されているキンクロラックに関して新規の知見が集積され、さらに、現在進行中の遺伝子解の結果と併せて、作用機序の詳細がほぼ解明されるものと考えられる。
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