研究概要 |
1)Fusarium oxysporumのcDNAのクローン化 宿主体内(導管液中)で特異的に発現するF.oxysporum遺伝子のcDNAをクローン化する目的で,F.oxysporum f.sp.cucumerinumをキュウリ導管液で培養し菌体からmRNAを精製した。同様に,PD液体培地でも培養し菌体mRNAを精製した。これら2種類のmRNA集団を用いてサプレッションサブトラクティブハイブリダイゼーションを行い,導管液中の菌に特異的なcDNAクローン候補を約600個を得た。任意に選んだ90個のcDNAのRNAドットブロット解析により,導管液中の菌に特異的と判定されたcDNA(20個)の塩基配列を決定した。このうちの2個(#52および#83)は,Ac-type transposonおよびcation efflux system proteinとそれぞれ極めて高い相同性を示した。 2)Fusarium oxysporumの遺伝子破壊 標的遺伝子として宿主体内特異的に発現する酵素トマチナーゼをコードする遺伝子(FoTom)を選び,遺伝子破壊を試みた。まず,F.oxysporumf.sp.lycopersiciのDNAからクローン化したトマチナーゼ遺伝子にhphカセットを挿入して遺伝子破壊用ベクター(pFoTom::hyg)を構築した。これを用いてF.oxysporum f.sp.lycopersiciのプロトプラストを形質転換し,形質転換体18株を得た。得られた形質転換菌の1株(#10株)は,in vitroでのトマチナーゼ誘導が抑制され,接種試験の結果トマトに対する病原性が低下していた。これらのことから,病原性因子としてのトマチナーゼの役割が強く示唆された。#10株のDNAを調べると,pFoTom::hyが異所的に挿入されていた。RNA解析の結果,FoTomの一部がアンチセンスRNAとして転写されていることがわかった。#10株ではFoTomの転写後抑制型ジーンサイレンシングが起こっていることが示唆された。
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