1)キュウリ導管液中で特異的に発現するキュウリつる割病菌の遺伝子について、mRNAおよびタンパク質レベルで調査した。キュウリつる割病菌のmRNAを用いてサブレッションサプトラクティブハイブリダイゼーションを行い、キュウリ導管液中で特異的に発現する29個のcDNAクローンを得た。これらのcDNAの塩基配列を決定し、データベースの既知配列との相同性を検索するとともに、宿主体内での発現をRT-PCRによって調べた。この結果、NIPSNAPと高い相同性をもつcDNA(#151)および陽イオントランスポーターと高い相同性をもつcDNA(#83)は、キュウリ体内でも発現していることが確認された。一方、タンパク質レベルでは、導管液中に分泌蓄積されるキュウリつる割病菌タンパク質を二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2DSDS-PAGE)で分離した。導管液中で特異的に蓄積するタンパク質スポット22個について、MALDI-TOF MSを用いたペプチドマスフィンガープリンティング解析を行った。得られた結果をもとにタンパク質のデータバンクを検索したが、相同な既知タンパク質は見い出されなかった。 2)宿主体内での発現することがすでにわかっているトマト萎ちょう病菌のトマチナーゼ遺伝子を標的にした遺伝子破壊を試み、本遺伝子、の病原性への関与を調べた。得られた形質転換体(18株)においては、α-トマチン感受性が増大し、トマチナーゼ活性が低下していた。形質転換体によるトマトへの接種実験の結果、病原性が有意に低下していた。このことから、トマト萎ちょう病菌においては、トマチナーゼ遺伝子が病原性に関与することが示唆された。形質転換体を用いたノーザン解析の結果、トマチナーゼ遺伝子のアンチセンスRNAが発現していることが明らかになった。このことから、形質転換体におけるトマチナーゼ活性の抑制には、転写後ジーンサイレンシングが関係していることが示唆された。
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