本研究では、3つの課題について研究を行った。1)ダイアンソウイルスウイルスの複製に関与するウイルスRNAのシス因子の解析。2)ウイルスの複製に関与する27kDと88kDタンパク質の様々な領域に対するポリクローナル抗体の作製。3)ウイルスゲノムRNAのin vitro複製系の構築。 成果の概要:1)レッドクローバーネクロティックモザイクダイアンソウイルス(RCNMV-カナダ株)の遺伝子操作系を構築し、in vitro転写RNAのプロトプラストへの感染系を確立した。さらに、接種条件の改良とRNA検出プローブの改良によりサブゲノムRNAとマイナス鎖RNAの効率的な検出に成功した。カナダ株の温度感受性(17℃では宿主植物に全身感染できるが、22℃では接種葉にも感染できない)が一細胞レベルでのRNA複製過程にあることを明らかにした。温度感受性を示さないオーストラリア株とカナダ株の間で作成したリコンビナントウイルス及びキメラウイルスの解析から、カナダ株の温度感受性は、ゲノムRNA1とRNA2のうちRNA1が支配していること、さらにRNA1の3'非翻訳領域が関与していることを明らかにした。2)複製酵素成分タンパク質p27とp88を特異的に検出できるポリクローナル抗体を作成した。3)ウイルス感染プロトプラストから活性の高い感染特異的RNA合成酵素画分を得ることに成功した。RNA合成酵素画分でのRNA合成活性が温度の影響を受けなかったことからRNA複製の温度感受性はRNA合成の伸長過程以外、特に認識の初期段階であることが示唆された。特に大きな成果は、プロトプラストからの鋳型依存性可溶化酵素を容易に調製できる系を確立したことと、ウイルスゲノムRNAの3'非翻訳領域の塩基配列がRNA複製の温度感受性を決定していることを明らかにしたことで、複製酵素と相互作用するRNA構造の解明の解明が可能になったことである。
|