研究概要 |
VTR記録とコンピュータによる画像解析を組み合わせて、テンサン幼虫の歩行行動解析を行った。解析対象は人工飼料育の3, 4, 5齢幼虫であり、比較対照としてクヌギ生葉育の各齢幼虫を用いた。幼虫体節につけたポイント問の距離(UNIT)の歩行に伴う変化を観察すると、クヌギ生葉育の場合には前部から後部へ向かって体節間の伸縮が整然と同調して観察された。それに対して人工飼料育の幼虫ではこの同調がほとんど見られず、彷徨するような足どりと形容されるものであった。また体節の伸び縮みの大きさも異なり、UNIT間相互相関関数のグラフの振幅は人工飼料育の場合、生葉育の1/3以下であり、いかにも力強さのない歩行行動であった。 これがひいては人工飼料育テンサン幼虫の腹脚把握力の弱さに通じるものと思われるが、人工飼料の栄養成分との関連性については明らかにすることができなかった。しかしテンサン幼虫にもこのように歩行解析が可能になったことの意義は大きく、今後いろいろな場面にこの解析法が活用されることと思われる。 人工飼料育から生葉育に移行して就眠・脱皮を経ると腹脚把握力が回復する事実から、稚蚕期の人工飼料育と壮蚕期の立木放飼育の問に生葉室内育を挟む総合飼育体系が提案された。稚蚕人工飼料育を何齢まで行うのが良いのかについてのフィールド試験を行い、本年度は1齢のみが最良との結果が出たが、これについては今後数年かけてデータを蓄積してゆきたい。
|