クワ芽枯病菌に対する拮抗菌の検索と、クワの生育には悪影響をおよぼさない、拮抗菌のスクリーニングを同時に行う、同時選抜法について検討した。Herrの三重培地法を基準として、1層目培地に添加したクワカルスの褐変化を指標として、採集した菌株をクワカルスに直接接種したところ、同時選抜法でのカルスの褐変化の有無と高い確率で一致し、同時選抜法の有効性が確認された。 Herrの三重培地法を改変した方法で、土壌からクワ芽枯病菌に対する拮抗菌を検索し、強い拮抗作用を持つ39L40C株を選抜した。39L40C株はStreptomyces sp.で、クワ芽枯病以外の植物病原菌に対しても強い拮抗作用を示し、幅広い抗菌スペクトルを持っていることが判明した。PS液体培地を用いた培養ろ液の抗菌活性について検討した結果、培養24時間では全く抗菌活性は見られなかった。培養72時間後から、70rpmで振とう培養した場合には、強い抗菌活性が認められた。静置培養した場合にも、培養72時間後から、抗菌活性が認められた。170rpmで振とう培養した場合には、培養120時間後から、抗菌活性が認められたが、前2者に比べるとその活性は低かった。ろ液を120℃、15分間オートクレーブ処理すると、抗菌活性は著しく減少した。39L40C株の培養ろ液を添加した液体培地で77芽枯病菌の分生子を培養すると、95%以上の分生子はコロニーを形成せず、その生育も顕著に阻害された。 39L40C株の桑条を用いた抗菌活性試験および桑条切片上での生育抑制効果を検討した結果、ペーパーディスクを用いた場合と同様、桑条の場合にもクワ芽枯病菌の生育を抑制した。39L40C株は乾燥条件下で14日後も生存が確認された。39L40C株を先に接種しておくと、桑条で顕著な発病抑制効果が観察された。 以上のことから、クワ芽枯病の生物防除に利用できる可能性が示唆された。
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