研究概要 |
荒廃地の植生回復や修復に有効な非マメ科窒素固定植物および共生菌フランキアについて,共生菌の分離,宿主・共生菌双方の塩ストレス耐性について研究を行った。 ヤマハンノキ根粒から1株の放線菌を分離し,宿主幼植物に対する接種試験によって,窒素固定活性を有する根粒の着生が確認できたので,この菌株を有効フランキアと同定し,Ahi1株と命名した。この菌株を含め,マルバグミからのEma1株,モクマオウからのCeq1株,およびそれらの宿主植物であるマルバグミ,モクマオウ,オオバヤシャブシ,ヤマハンハンノキについて耐塩性調査を行った。宿主植物の種子発芽は,低塩濃度のマルバグミ種子を除いて,塩濃度の上昇の伴って急激に低下したが,発芽限界濃度は種子によって異なり,モクマオウ,オオバヤシャブシで200mM,マルバグミで150mM,ヤマハンノキで100mMであった。幼植物の耐塩性は,特にモクマオウが優れ,500mMのNaCl溶液でも生存し,300mMまでは根粒の着生が起こった。マルバグミの場合は,100mMまでの植物に根粒が着生したが,塩処理期間が長くなると50mM以上で,落葉・枯死する個体が現れた。オオバヤシャブシ,ヤマハンノキでは50mMまでの植物に根粒が着生するものの,低塩濃度でも1ヶ月以内にすべて枯死した。従って,耐塩性の強度はモクマオウが強から最強,マルバグミが弱,オオバヤシャブシ,ヤマハンノキは極弱と判断された。フランキアの耐塩性は,100mM以上の塩濃度で菌糸が太く,短くなり,生育が著しく抑制されたが,500mMの塩溶液に晒された菌体であっても,塩無添加培地に移植すると再増殖を始めた。従って,フランキアの耐塩性は一般に宿主よりかなり高いと判断された。 以上の結果,モクマオウ-Ceq1株共生系が最も耐塩性に優れ,塩集積地帯の植生回復や修復に有用な共生系であると強く示唆された。
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