研究概要 |
昨年度の共生菌の分離,宿主・共生菌双方の塩ストレス耐性の結果を基に,今年度は窒素固定活性の発現に対する塩ストレスの影響について研究を展開した。 植物としては,昨年度の結果から耐塩性が弱いと判断されたヤマハンノキとオオバヤシャブシおよび極めて強いと判断されたモクマオウを用いた。ヤマハンノキ,オオバヤシャブシにはフランキアAhi1株を,モクマオウにはCeq1株を接種して根粒を十分に着生させ,その後バーミキュライトと鹿沼土の入ったホットに移植して塩処理を開始した。塩濃度はヤマハンハンノキ,オオバヤシャブシに対しては0〜100mM,モクマオウに対しては0〜500mMのNaCl溶液を1日おきに与え,窒素固定活性(アセチレン還元活性:ARA)を経時的に2週間測定した。ヤマハンノキは培土のいかんに関わらず,ARAは塩処理開始直後から著しく減少し,50mMでは8日目に,100mMでは4日目に活性が検出されなくなった。オオバヤシャブシでは処理時間の経過につれてARAはかなりの速度で低下するものの,塩濃度のいかんに関わらず14日目でもバーミキュライトで40%,鹿沼土で10〜20%の活性が検出された。モクマオウのARAはほぼ塩濃度に依存して低下したが,培土により活性変動のパターンや低下の強さはかなり異なっていた。特にバーミキュライトの100mMでは一旦増加が起こった後に減少が始まり,14日目でも75%の活性が検出され,これに対して鹿沼土では処理直後から減少が起こり,14日目のレベルは50%以下であった。500mMでは14日目でARAは検出されなくなるものの,200mM,300mMでは依然として20%前後の活性が検出された。 以上の結果,モクマオウ-Ceq1株共生系は窒素固定活性の発現の面からも,塩集積地帯の植生回復や修復に有用な共生系であることが明らかとなった。
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