研究概要 |
本年度はヤマモモ,オオバヤシャブシ,ドクウツギから生育の良好な有効フランキアの分離,および耐塩性の高いモクマオウとその分離菌Ceq1株の耐塩性メカニズムについて研究を行った。 オオバヤシャブシ根粒からは生育の良好な1株が得られ,宿主植物に対する接種試験で窒素固定活性を有する根粒が形成されたことより,有効フランキアであると同定した。ヤマモモおよびドクウツギ根粒からは,フランキアに特徴的な胞子嚢やベシクルを有するコロニーが出現せず,フランキア株を得ることはできなかった。したがって,多様な菌株を用いて交互接種による宿主特異性を調べ,最も合理的な宿主と菌との組み合わせを構築するという計画については十分な成果を得るには至らなかった。 モクマオウは塩処理によって体内Na^+イオン濃度が著しく上昇しても枯死することはないので,その耐塩性の機構を明らかにするために,体内適合溶質の変化について調べた。その結果,グリシンベタインは塩処理植物においても全く検出されないのに対し,プロリンは塩処理によって急激に増加することが明らかとなった。このことより,モクマオウは体内の塩濃度の上昇に対して速やかにプロリンを合成し,塩による浸透圧変化に対処していると考えられた。一方,フランキア(Ceq1株)は外部の塩濃度が上昇しても,菌糸を太く,短くして体内Na^+イオン濃度の上昇を抑え,高塩環境に対処していることが明らかとなった。この現象はCeq1株以外の他のフランキア株でも同様に認められた。したがって,フランキアは一般に宿主側より耐塩性に優れ,耐塩性の高い宿主とフランキアとの組み合わせを構築する場合,宿主側の耐塩性がより重要であると結論された。
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