植物による環境修復を行うための基盤的研究を実施した。特に、高CO_2濃度に対する植物の応答のうち、本年度は、光合成産物および窒素化合物の転流を主体に研究を実施した。 供試植物として子実肥大期のダイズ(品種:タマホマレ)を用い、高CO_2濃度および葉切除処理を行い、最上位より下位の第3葉目の葉より同化した^<13>Cおよび^<15>Nの挙動を7日間に渉って追跡した。 その結果、[I](1)対照区では、昼間の^<13>C転流率は約50%だったのに対して、夜間では80〜90%と昼間の約2倍と高かった。^<13>Cの多くは莢へと分配された。(2)莢の^<13>Cに占める水溶性画分の占める割合は昼間(約30%)より夜間(15%)で低く、このことは、莢へ転流された炭素化合物の高分子化合物への変換は夜の方が活発であることを示している。(3)処理の影響は昼間では認められなかったが、夜間では転流率が葉切除下で対照区と匹敵して高く、高CO_2濃度下では夜間に一時上昇したがやがて低下した。以上より、^<13>C転流は夜間に活発に行われシンクの影響を受けると推定される。 [II](1)高CO_2濃度下では、葉の窒素含有率は低下した。高CO_2濃度下では^<15>N分配率は葉で低下し、茎および根で上昇した。(2)一方、吸収した窒素は根から葉へ蒸散流によって移動することから、蒸散速度を測定した所、^<15>N分配率高い相関関係を示した。すなわち、高CO_2濃度下では気孔を閉じ、蒸散流が減少するため根から葉への窒素の移動も減少し、葉への窒素供給する。その結果、葉の窒素量が減少し、光合成のダウンレギュレーションを引き起こすと推定される。
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