火山灰土壌中の活性粘土成分であるアロフェンに対するオキソ酸(リン酸、ホウ酸、低分子有機酸など)の吸着挙動は、環境保全的および農業的観点から重要であるため、その詳細な吸着機構を実験とともに量子化学的理論計算により検討した。 吸着実験結果から、いずれのオキソ酸もアロフェン表面のヒドロキシル基との配位子交換反応によって吸着することが明らかとなった。この配位子交換反応についてはこれまでにも報告はあるが、今回、量子化学的理論計算を取り入れた本研究によって、さらに、以下の新しい事実が確認された。 1.リン酸およびホウ酸は、一部、アロフェン中のケイ素を置き換えながら吸着する。 2.吸着したホウ酸分子はアロフェンとの間で、Al-OH-Bという特異な結合様式をとる。 3.オキソ酸吸着によって、吸着母体であるアロフェンの陽イオン交換容量および表面酸性が増大した。この原因は、オキソ酸吸着部位近傍のシラノール基の解離性(ブレンステッド酸的性質)が増大したためである。 4.シラノール基解離性の増大は、近傍の吸着質(オキソ酸)の誘起的効果によることが明らかとなった。この誘起的効果は、リン酸の場合で最も大きかった。 今後(12年度)は、オキソ酸の種類を増やすとともに、固体核磁気共鳴スペクトルによるケイ素、アルミニウム(アロフェン)とリン、ホウ素(オキソ酸)の状態を解析する。さらに、より詳細な分子軌道法計算により、アロフェンとオキソ酸との間の電子の流れを解明する予定である。
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