研究概要 |
平成11年度は以下の項目についての調査・研究を行った. (1)根圏土壌に植物や微生物によって供給される低分子有機酸の量と組成 (2)菌根菌やその他の細菌,放線菌の季節変動 (3)土壌環境(気温,地温,降水量,土壌水分,土壌硬度)のモニタリング (4)土壌中の有機体セレンの分別定量 まず,調査対象圃場である,高知県南国市白木谷斉藤牧場周辺の天然生林,造成地,草地において,地形・土壌・植生の調査を行った.同時にサンプリングを行い,土壌の理化学性の分析(pH,電気電導度,陽イオン交換容量,交換性塩基(Ca,Mg,Na,K)含量,全炭素・全窒素含量,可給態リン酸含量,酸化物含量、荷電ゼロ点,粘土鉱物組成)を行った.また,現地において上記の項目をモニタリングすると同時に,根圏土壌中の低分子有機酸組成の分析(乳酸,リンゴ酸,シュウ酸,クエン酸,コハク酸,マロン酸,マレイン酸、フマル酸)の量と組成の季節変動の解析を行った.土壌生態系のモニタリングとしては,細菌・放線菌の季節変動(希釈平板法),グラム陽性・陰性菌の種の同定(バイオログ法)を行った. 微生物生菌数と低分子有機酸の量は密接に関係しており,主に,温度と土壌の水分条件によって変動することがわかった.検出・同定された細菌のほとんどがBacillus属のものであったが,土地利用形態によってその組成,季節変動性が異なることがわかった. 新しいシバ草地では養水分の土壌断面内での移動が少なく,草地生態系が安定化するにつれて,土壌断面内ででの物質循環が活発になることや,化学的,生物学的にはしだいに天然生林の様相に近づいていくことなどがわかった.
|