研究概要 |
動電現象を利用した土壌修復のモデル実験は密閉したカラムに充填した土壌を用いて行われることが多いが,原位置での適用を考えると土壌表面が開放された実験装置を用いたほうが良い.この研究ではまず,上面が開放された電気浸透セルを開発し,実験条件を設定した. 次に,開発した装置を用いて,約100,200,300時間の通電を行い間隙水質の時間発展を調べた.その結果,陽極における水の電気分解によって生成した水素イオンが土壌鉱物を溶解するため,間隙水の主要イオンはアルミニウムイオンとなること,アルミニウムイオンは非常にゆっくりと陰極方向へ移動することが見出された.このアルミニウムイオンは,陽イオン性の汚染物質を土壌の陽イオン交換基から脱着させるために役立つ面もあるが,陰極付近で重金属イオンを伴って沈殿する可能性があるため,汚染除去の妨げになると考えられた. そこで次に,移動した重金属やアルミニウムイオンの陰極付近での沈殿を防ぐため,陰極前面に水素型イオン交換樹脂を配置する方法を考案し,人工的な銅汚染土を試料として試験した.この改良によって,陰極側の土壌のアルカリ性化をほぼ完全に防ぐことができ,移動した銅イオンは陽イオン交換樹脂に吸着されて補足された.陰極室から排出される電気浸透水には銅イオンは検出されなかった. 上記の方法により,陽イオン性の重金属イオンの除去は効率的に行うことが可能となった.一方,通電を続けると電気浸流束が低下する.この現象は既往の研究でも指摘されているが,今回も観測された.これは非イオン性の有機汚染物質の除去には不都合である.この現象の機構を理解するため,電気泳動.電気浸透課程の数値モデルを作成中である.
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