研究概要 |
酵母(Saccharomyces cerevisiae)のメタロチオネイン合成遺伝子CUP1をBiomassの大きいいくつかの植物に導入して重金属耐性植物を作成して重金属存在下で生育させ、その吸収能を検討し、最終的にはファイトレメディエーションに供する植物の分子育種を試みている。本年度の研究で、このCUP1遺伝子をBiomassの大きいヒマワリ(Helianthus annuus)やカラシナ(Brassica juncea)に導入して作製した遺伝子組換えヒマワリとカラシナを作製した。そのうち個体再生に成功した遺伝子組換えカラシナについて、再生個体を水耕栽培で馴化させたものと、実生苗から水耕栽培で生育させた非組換えカラシナを用い、CdCl2を50,200,400μM含有する水耕液で栽培したところ、非組換えカラシナいずれの処理濃度でも全て1週間以内に枯死したが、組換えカラシナは30日間も生育できた。その時の地上部カドミウム含有率は約3,000ppmとなった。また、カドミウムを含む砂質土と黒ボク土でこの組換えカラシナを栽培した土壌からのカドミウムの収奪量を検討した結果、体内カドミウム濃度は非組換えカラシナの2.3倍の約500ppmと高濃度となった。体内に3,000ppmのカドミウムを含有しても枯死しない植物が育成できたのであるからこの程度のカドミウム含有率になるまで植物が吸収さえしてくれれば、数トン/haの乾物生産をする植物を年2〜3作栽培できれば実用性があるという試算となり、ファイトレメディエーションに利用可能なことが示された。 これから、この植物を実用化するため遺伝子組換え植物の安全性試験を実施する予定であるが、同時に組換え体を用いた環境浄化のためのパブリックアクセプタンスを得る必要もあると考えている。
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