植物ADPglucose pyrophosphorylase(AGPase)は、デンプン生合成においてグルコース供与体となるADPglucoseの合成を触媒する。AGPaseは大サブユニット(LS)と小サブユニット(SS)からなる4量体であり、LSはアロステリック調節を受け、SSは触媒活性を有している。Arabidopsis TL46植物は、葉におけるAGPase LSを欠損している変異体であり、野生株に比べ葉のAGPase活性および同化デンプン量がめざましく減少している。AGPaseによるデンプン生合成の量的変換を目指し、TL46植物の欠損しているAGPase LSに対応する遺伝子断片の単離、アロステリック変異AGPaseの作製、変異AGPaseのTL46植物での発現を計画した。 昨年度までにアロステリック感受性の変化した3種の変異AGPaseを作製し、また健全植物よりプロモーター領域を含む14イントロン・15エクソンからなる AGPaseLS 遺伝子断片を単離した。単離した遺伝子をそのまま、あるいは遺伝子にアロステリック変異を導入したのち自身のプロモーター下流に連結し、TL46植物を形質転換した。得られた形質転換植物の葉におけるAGPase活性およびデンプン蓄積量を経時的に解析した。その結果、アロステリック変異の導入により、同化デンプンの蓄積量はTL46変異株の4倍以上、野生株の約1.2倍に増加した。これらのことから、AGPaseのアロステリック調節は、植物のデンプン生合成量を左右しうることが示された。
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