植物のデンプン生合成における唯一の基質であるADPglucoseは、ADPglucose pyrophosphorylase(AGPase)によって合成される。AGPaseは、2つの大サブユニットと2つの小サブユニットからなるヘテロ4量体であり、3-phosphoglycerateおよびPiによりアロステリックに調節される。本研究では、AGPaseのアロステリック特性を改変することによるデンプンの量的変換を目指し、以下に示す成果を得た。 (1)Arabidopsis AGPase large subunit cDNA(ApL1)に部位特異的変異を導入し、変異ApL1 cDNAと野生型small subunit cDNA(ApS)を大腸菌中で同時に発現させ、アロステリック感受性の低下した変異AGPaseを作製した。 (2)Arabidopsis genomeより、プロモーター領域を含むApL1遺伝子を単離し、14イントロン・15エクソンからなる遺伝子構造を解析した。 (3)(1)で得た結果を基に、ApL1遺伝子に変異を導入し、自身のプロモーター下流に連結し、Arabidopsis TL46植物(ApL1タンパク質を欠損した変異体)を形質転換した。 (4)(3)で得られた形質転換植物を解析し、アロステリック変異をもつApL1遺伝子を発現する形質転換植物の葉における同化デンプン量が、親株TL46の約5倍、野生株の1.2倍に増加することを示した。 以上の結果より、植物AGPaseのアロステリック特性は、同化デンプン量に影響することが示唆された。
|