研究概要 |
マンノシルエリスリトールリピド(MEL)-A,B、サクシノイルトレハロースリピド(STL)-A,Bなどの糖脂質の化学構造と白血病細胞株に対する分化誘導性との相関について検討を進め、糖脂質の違いによって分化の方向が異なることを明らかにした。すなわち、STL-Aはいずれの細胞も単球系に、MEL-AおよびMEL-Bは顆粒球系に分化を誘導した。分化誘導の機構についても予備的検討を行い、STL-AはガングリオシドGM3を介して白血病細胞株を二次的に脱ガン化すると考えられること。MEL-Aはインシュリンレセプターチロシンキナーゼを阻害し、白血病細胞株のインシュリン依存性の増殖抑制と分化を誘導すると考えられることなどを明らかにした。さらに、MEL-Aがラット神経系細胞株PC12の分化誘導を引き起こし、神経突起の伸展とみられる形態的変化を認めた。この分化誘導機構として、NGFレセプターを介さない機構の存在を示唆した。また、MELがマウスメラノーマB16細胞にアポトーシスや分化を誘導することを発見した。すなわち、B16細胞をMEL処理をすることによって、クロマチン凝縮、DNAラダーが見られ、さらにフローサイトメトリ分析により、アポトーシス現象を確認した。微生物由来の糖脂質が癌細胞のアポトーシスを誘導することを認めたのは本研究が初めてである。さらに作用機構の解明を目指した研究を進めた。アポトーシスの抑制遺伝子bcl-2をB16細胞に導入し、MELによるアポトーシス誘導が起こるか否か調べた。その結果、Bcl-2がMEL依存性のB16細胞のアポトーシス誘導を抑制していると推定された。今後は、本糖脂質によるアポトーシス誘導および分化誘導の機構を詳細に検討する予定である。
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