研究概要 |
紅色非硫黄細菌における有機化合物からの初発電子獲得系に関する詳細は不明なところも多い。Rhodopseudomonas palustris No.7の細胞抽出液中には、D-及びL-乳酸に対してそれぞれNAD-非依存(フェナジンメトサルフェート)の脱水素酵素、エタノールにはNAD-依存の脱水素酵素の存在が見い出されている。これらの酵素の精製を試み、その中で、電気泳動的に単一なまでに精製することができたD-乳酸脱水素酵素(LDE)の諸性質を中心に検討した。D-LDHは、供試菌株をDL-乳酸を電子ならびに炭素源とした培地を用いて、光一嫌気下で約120時間培養した細胞を超音波破砕処理して細胞抽出液を調製し、これを硫安分画したのち、DEAEセルロース、プチルトヨパール、ハイドロキシアパタイトによる各クロマトグラフィーを用いて精製した。精製酵素は、SDS電気泳動の結果より、分子量57,000と推定した。また、等電点は5.0であり、L-乳酸に対しては活性を示さなかった。これとは別に、シトクロムc__-_2(Cyt c__-_2)を精製し、電気泳的に単一な標品として得ることができた。本菌のCyt c__-_2はすでに得られている他の光合成細菌のものと比較して、等電点がアルカリ性側(9.4)にあった。D-LDHによる乳酸の酸化反応に伴ってCyt c__-_2の還元が観察されたことから、本菌においては、乳酸からの電子は、D-LDH→cyt c__-_2→光化学系→NADへと流れて利用されるものと推定した。なお、L-LDEについては量的に少なく、不安定であることから精製できていない。また、NAD-依存アルコール脱水素酵素は、精製を試みたが、現在までのところ単一の標品として得ることができていない。
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