紅色非硫黄細菌における有機化合物からの初発電子獲得系に関する詳細は不明なところも多い。Rhodopseudomonas palustris No.7の細胞抽出液中に見いだされているNAD-非依存のD-およびL-乳酸脱水素酵素(LDH)、NAD-依存性のアルコール脱水素酵素について、すでに電気泳動的に均一なまでに精製されているD-LDHの酵素化学的性質の詳細について検討した。本酵素は、分子量235kDaで、4つのサブユニットからなると推定された。本酵素の活性の至適温度は50℃、至適pH8.5、D-乳酸に対するKm値は0.8mMで、DL-α-ヒドロキシ酢酸に対してはD-乳酸と比較して約40%の活性を示したが、L-乳酸には活性を示さなかった。本酵素はシュウ酸により可逆的に阻害され、そのKi値は0.12mMであった。本酵素の補欠分子族は、薄層クロマトグラフィー、可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの結果より、FADであることを明かにした。本酵素と共役し、D-乳酸からの電子により還元されることが明かにされ、すでに電気泳的に単一な標品が得られているシトクロムc_2についてもさらにその性質が検討され、分子量は12.4kDa算定され、他の紅色非硫黄細菌由来のものとは等電点が9.4とかなり高いことを明かにした。NAD-依存アルコール脱水素酵素(ADH)については、引き続き精製を試みたが、期間内に単一の標品として得ることができなかったので、部分精製標品を用いてその性質を検討した。ADHは、エタノール以上の直鎖アルコール(C_2〜C_7)に対して活性を示した。本酵素は、シアン化カリウムによって強く阻害され、0.1mMで60%阻害され、2mMで完全に活性を失った。
|