研究概要 |
樹木である交雑ヤマナラシを材料として、リグニン生合成に関与している酵素遺伝子群を多数単離した。それらの酵素遺伝子の発現解析をリポーター遺伝子を用いたり、in situ hybridization解析をすることにより、維管束特異的に発現する遺伝子種を特定した。さらにプロモーター解析を通じて維管束特異的に発現するために必要な領域を絞り込んだ。更に、交雑ヤマナラシへの遺伝子導入系と植物体への再生系を構築した。 現在、リグニン生合成に関する研究で直接リグニン生合成に関与している遺伝子種を多重遺伝子族の中から特定した例は少ない。そのため、リグニン生合成を人為的に制御する研究では酵素遺伝子の発現特性に関わらず、CaMV35sプロモーターを用いた手法が多い。リグニン生合成を理解する上では、個々の酵素だけに注目するだけではなく、それらの遺伝子を制御する遺伝子を解明する事が重要である。そこで、本研究室で既に解析したこれらの遺伝子の転写制御に関わるプロモーター領域を用いて、転写因子の遺伝子を単離する事を目的とした。 樹木である交雑ヤマナラシのリグニン生合成に直接関与していると考えられる遺伝子pal g2b,prxA3aのプロモーターを欠失解析した結果、維管束特異的発現に関与していると考えられる領域が約200bpまで絞り込むことができた。そこを標識してgel shiftアッセイを行った。また、そこには転写因子であるlimと結合すると考えられる配列が存在した。そこで既に維管束で特的に発現してリグニン生合成に関与していると考えられているNTlim1のcDNAを単離した。また、交雑ヤマナラシからもそのホモログを単離したところ、アミノ酸レベルで85%以上一致していた。
|