研究概要 |
【目的】納豆菌の窒素同化代謝を支配するグルタミン酸合成酵素(GOGAT)遺伝子破壊株を作製して、本破壊株のγ-ポリグルタミン酸(PGA)生産性を調べた。【方法と結果】枯草菌168のゲノム情報の基づいて、納豆菌NR-1のGOGAT遺伝子の約5.5KbをPCR増幅し、これをpUC18に連結してgltA領域にCm耐性遺伝子を挿入した。この欠陥GOGAT遺伝子を含むpUC18を納豆菌NR-1に取り込ませてGOGAT遺伝子破壊株を作製した。破壊株は生育にグルタミン酸を要求し、グルタミン酸の添加量に伴ってPGAは増大した。8%グルタミン酸添加培地の48時間培養でPGAの生産は最大(35gm/ml)に達し、この生産量は野性株NR-1の約2倍に相当した。 【目的】枯草菌のゲノム配列に、Bacillus anthracisの莢膜成分であるγ-D-ポリグルタミン酸の合成酵素遺伝子(CapBCA)とホモロジーの高い遺伝子(ywsC、ywtA、ywtB)を見い出した。この領域からプローブを合成して納豆菌のこれら3つの遺伝子をクロ一ニングし、それぞれの遺伝子を破壊した納豆菌を作製して、納豆菌のこれら3つの遺伝子とPGA合成との関係を調べた。【方法と結果】納豆菌NR-1からクローン化した3つの遺伝子(ywsC、ywtA、ywtB)のそれぞれにcat遺伝子を挿入し、その下流にSpacプロモーターを連結したそれぞれの破壊遺伝子をもつプラスミドを調製した.これら3つのプラスミドを納豆菌NR-1にコンピーテント法で形質転換し、相同組換えによってywtA,ywtBの導伝子破壊株を作製した。ywtB遺伝子破壊株からはPGAが合成されたが、ywsCとywtAの破壊株からはPGAは合成されなかった。これらの結果は、納豆菌NR-1のPGAの合成には少なくともywsCとywtAの2つの遺伝子が必要であることが示唆された。
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