納豆菌(Bacillus subtilis IFO16449)のγ-ポリグルタミン酸(PGA)の生合成に関与する遺伝子をクローニングした。クローン化したDNA断片(4.2Kb)に、B.subtilis 168で報告されているywsC、ywtABCとほぼ同一の塩基配列を示す4つの遺伝子を同定し、これらの遺伝子がPGA合成に関与する遺伝子であることは、このDNA断片を形質転換した大腸菌(E.coli JM109)がPGAを生産したことによって確かめられた。納豆菌NR-1のこれら4つの遺伝子(ywsC-ywtABC)の機能を明らかにするために、ywsC、ywtA、ywtBの3つの遺伝子破壊株を作製した。ywsCとywtAの2つの遺伝子破壊株はPGAをまったく合成しなかったが、ywtB遺伝子破壊株は少量のPGAを合成した。これらの結果から、納豆菌NR-1のPGA合成には少なくともywsCとywtAの2つの遺伝子が必要であり、ywtC遺伝子はPGAの大量生産に関わる遺伝子であることが示された。 ywsC遺伝子(1182bp)とその上流約1Kbを含むDNA断片の下流に、ywsC遺伝子のC末端にヒスタグコドンを付与した断片(300bp)とPGAオペロンの転写終結配列を含む断片(150bp)のPCR増幅物を連結させ、これをpHY300PLKベクターに挿入し、この組換えプラスミドを納豆菌のywsC遺伝子破壊株に形質転換した。形質転換株にヒスタグ抗体でYwsCタンパク質(分子量44K)の生産とPGA合成を確認したのち、菌体破壊液からニッケルアフィニテイークロマトによってYwsCタンパク質を精製した。精製タンパク質を^<14>C-L-グルタミン酸、ATP、マンガンイオンを含む反応液に加えて反応させ、^<14>C-PGAを反応生成物として検出した。この結果は、YwsCタンパク質がL-あるいはD-グルタミン酸をγ-グルタミル結合させてPGAを合成するPGAシンテターゼであることを強く示唆している。
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