研究概要 |
動物特有の種々の生物学的な現象とゲノムや染色体構造、遺伝子の機能的発現とその核内配置、遺伝子間コミュニケーション等との関係を明らかにすることを目指し、まずヒトSNRPNと、近傍領域の15番染色体セントロメアの細胞周期に依存したコミュニケーション、核内配置、クロモソームテリトリーとの関係をヒトHL60細胞で検討した。HL60細胞ではこの遺伝子の複製タイミングや遺伝子発現のインプリンティングは維持されているものの、細胞周期依存的ホモログ間コミュニケーションが起こらず、これには複製や発現のコントロール以外の要因が関与することを示した。また同一染色体上のSNRPNとセントロメアはS期後期に核内の同じ分室にパッケージされること、これは複製後に起こり同一複製focusで複製されるのではないこと、SNRPNは発現にかかわらずテリトリー周辺部に、セントロメアはテリトリー内部に配置していることを明らかにした。次に遺伝子発現とサイレンシング、遺伝子の核内配置の関係の一局面を明らかにするため、核内一次転写産物の検出をSNRPNを例として可視化したところ、時間依存的に片アレルから両アレルに発現パターンが変化し、SNRPNの発現はDNAメチル化やヒストン脱アセチル化によって制御されることを明らかにした。一方、マウスIgf2のアレル特異的不活性化機構に核内ヘテロクロマチンが関与するか検討した。一方のアレルがヘテロクロマチンと結合する核が30%程度見られ、発現が抑制される父方アレルが結合する割合が多く、この機構の関与が示唆され、この結合割合はS期の進行とともに減少し、複製との関連性も示唆された。またマウス胚性線維芽細胞を用いてIgf2,H19等の発現状態も可視化し、インプリント遺伝子が、アレル特異的発現制御を受けること、遺伝子の発現状態と核マトリクスへの結合性は密接に関連することを見出した。
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