ニコチン酸関連化合物のヒドロキシルラジカル消去能を、ESRでスピントラッピング法を用いて調べた結果、イソニコチン酸、イソニコチンアミド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド、6-アミノニコチン酸、6-アミノニコチンアミド、ピリジンなどで強い消去能がみられた。そこで、実際に細胞系においても抗酸化作用があるかどうかを、これらのニコチン酸関連化合物を中心に調べた。細胞は、常に活性酸素の発生に晒されているが、様々な防御機構により細胞内外の酸化還元状態(レドックス状態)を維持している。このレドックス状態の変化は、細胞にとって「酸化ストレス」となり、細胞機能障害やアポトーシスを引き起こすことが知られている。そこで、あらかじめニコチン酸関連化合物で処理したHL-60細胞に過酸化水素あるいはtert-butyl hydoperoxide(tBHP)にて酸化ストレスを負荷し、細胞内の過酸化状態の増減を調べた。酸化ストレスのプローブとしてdichlorofluorescin diacetate(DCFH-DA)を用い、flow cytometoryを用いて検出した。その結果、ニコチン酸ヒドラジドは過酸化水素処理に対して効果的に酸化ストレスを減少させた。そしてイソニコチン酸ヒドラジドも過酸化水素処理に対して10mMと1mMで抗酸化作用がみられた。これらのことから、ニコチン酸ヒドラジドとイソニコチン酸ヒドラジドには、細胞内においても抗酸化作用をもつことが示唆された。これらのことより、過酸化水素またはtBHPによる酸化ストレス誘導のアポトーシスにおいても、これらの抗酸化剤によって異なる変化が見られるのではないかと推察されるので、抗酸化能を評価するために酸化ストレス誘導アポトーシスに及ぼす影響についても検討した。その結果、過酸化水素誘導アポトーシスでは、ニコチン酸ヒドラジドとイソニコチン酸ヒドラジドで抑制がみられた。
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