本研究はラクトバチルス属乳酸菌の菌体によって動物の腸管の免疫作用が増強されるかどうかを調べ、その菌体内の免疫賦活成分を明らかにすることを目的として行った。本年度は昨年度に確立した分泌性IgAの測定法を用いて、免疫賦活化作用の強い乳酸菌を検索するとともに、乳酸菌の菌体中の賦活成分を単離することを試みた。 先ず、さまざまなラクトバチルス属乳酸菌をBALB/cマウスの腸管より採取したパイエル板から調製したパイエル板培養細胞とともに培養し、培地中に分泌された分泌性IgA抗体の生成をELISA法によって調べることにより、免疫賦活化作用の強い乳酸菌を検索した。その結果、Lactobacillus rhamnosusやL.reuteri、L.plantarumなどに強い免疫賦活化作用が見られた。そこで、L.rhamnosusの免疫賦活成分を明らかにするために、菌体を超音波処理して細胞壁画分と細胞質画分に分画し、それぞれについて免疫賦活化作用を調べた。その結果、細胞壁画分のみならず、細胞質画分についても賦活化作用が見られた。細胞質画分についてプロテイナーゼ処理した後、熱処理することによっても賦活化作用が見られた。この細胞質画分について、DEAE-Sephacelカラムを用いて免疫賦活成分の分離を試みたところ、0.2〜0.4M NaClで溶出される画分に高い賦活化作用が見られた。この溶出画分をSephacryl S-500HRによってゲル濾過した後、MonoQカラムによって溶出したところ、賦活成分は糖ペプチドであることが示唆された。
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