IIS型制限酵素はDNA認識機能ドメインとDNA切断機能ドメインから構成されており、マグネシウムイオンの存在下で、DNAの認識配列に結合した酵素のドメイン間のコンホメーションが変化した後、第二の酵素分子との間で一時的に二量体を形成して、特異的切断反応を触媒するというモデムが提唱されている。そこで、本研究ではIIS型制限酵素StsIの、分子内および分子間ドメインのシグナル伝達機構を解析するために、変異酵素を取得して諸性質の解析を行った。まず、エラー・プロ-ンPCR法により得られた、DNA切断活性を消失した変異酵素13種のうち、大量発現の際インクルージョンボディーを形成する5種類の変異酵素の可溶化条件の検討を行った。塩酸グアニジンで可溶化したのち、再生溶液に瞬時希釈することで、リフォールディングが可能にとなり、均一酵素標品が得られた。CDスペクトルを測定した結果、野生型とほぼ同じ二次構造を保持していることを明らかにした。次に、均一酵素標品を用いてDNA結合活性と切断特異性を調べた結果、StsIのアイソシゾマーであるFokIとは異なり、DNA切断反応の際に形成される二量体のうちの一方の酵素分子は、必ずしもDNAに結合していなくても切断反応が起こることを明らかにした。さらに、野生型StsIの立体構造を解析するため、His-tag融合蛋白質として大量発現させる系を構築し、培養条件の検討を行った結果、大部分を可溶性画分に発現させることに成功した。2種類のアフィニティーカラムを用いた精製により、約50mgの精製酵素標品が取得できた。ハンギングドロップ法を用いて、結晶化条件の検討を行ったが、X線解析を行うのに充分な大きさの結晶は得られていない。
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