研究概要 |
出芽酵母のNps1pはRSCと呼ばれる生育に必須なクロマチンリモデリング因子の活性サブユニットである。我々は、RSCの機能解析を目的としてNPS1の温度感受性変異株を2株分離し、これらの株の解析により、Nps1pあるいはRSC複合体が、増殖に伴うセントロメア等の染色体の特定部位での染色体高次構造の形成・維持に働いている事、またこの複合体の細胞周期における作用時期がS期後期からG2期である事などを明らかにしてきた。従って、本因子はDNA複製後に核内で起こる、染色体分配装置の形成に重要な役割を果たしていると考えられる。 本研究は、NPS1の温度感受性変異株を利用し、RSCの染色体分配装置の形成に果す役割を解析する事を目的としている。本年度の研究では、RSCの正、並びに負の制御因子の同定を目的として、nps1変異と合成的に致死性を示す変異株、並びにnps1変異の抑圧変異株の取得と解析を行った。合成致死株については、紫外線照射による変異誘発後、生育した約3万のコロニーより、45の候補株を得、現在これらの相補性試験を行っている。nps1変異の抑圧変異株については、以下の方法で取得を行った。nps1変異株は、温度感受性の他に、微小管重合阻害剤であるチアベンダゾール(TBZ)にも感受性を示す。そこで、nps1変異株から、自然復帰変異でまずTBZ耐性を獲得したもの約10,000株を選抜し、これらの温度感受性を調べたところ、nps1変異株よりさらに強い高温感受性、または低温感受性を示すものと、nps1変異株の高温感受性を抑圧するものの2グループに別れた。各グループの候補株間での相補性試験により、これらから前者のグループより6株、後者より3株の独立した単一変異株を確立した。現在これらの変異の原因遺伝子のクローニングを行っている。
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