研究概要 |
出芽酵母のNps1pはRSCと呼ばれる生育に必須なクロマチンリモデリング因子の活性サブユニットである。我々は、NPS1の温度感受性変異株解析により、Nps1pあるいはRSC複合体が、増殖に伴うセントロメア等の染色体の特定部位での染色体高次構造の形成・維持に働いている事、またこの複合体の細胞周期における作用時期がS期後期からG2期である事などを明らかにしてきた。本研究は、NPS1の温度感受性変異株を利用し、RSCの染色体分配装置の形成に果す役割を解析する事を目的として実施し、以下の成果を得た。 1)nps1変異株のチアベンダゾール(TBZ)にも感受性をを指標にnps1変異の抑圧変異株の取得と解析を行い、9相補性群に属す15株の変異株を得た。この内3つの原因遺伝子のクローニングを行い、NUP82、ABD1,CET1と同定した。 2)nps1変異を遺伝子量の増加によって抑圧する多コピーサプレッサー遺伝子(HSN遺伝子)の取得と解析を行った結果、NPS1自身を含む9種の遺伝子を取得し、これらの内4種がPKC1(プロテインキナーゼCのホモログをコード)と、この活性化に働くものであることを明らかにした。PKC1は、酵母においてMAPキナーゼ経路の活性化を通じ、細胞壁形成を制御することが知られているが、PKC1によるnps1変異の抑圧は、上述の経路とは異なる新しい経路、あるいは下流の因子の活性化によるものであることを明らかにした。HSN遺伝子の機能的関連をさらに詳細に解析した結果、PKC1は微小管結合因子BIMIを活性化することを見いだした。
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