研究概要 |
霞ヶ浦において大発生していたMicrocystisが著しく減少し、代わりにOscillatoriaやPhormidium等が異常発生している。この藻類種の遷移を明らかにするため、霞ヶ浦から分離した4種の藻類を用いて藻類培養試験を行い、種の遷移に及ぼす化学的影響因子について検討を加えた。 今年度は、前年度と同様にMicrocystis aeruginosa K-5株を用いて霞ヶ浦における藻類増殖制限因子を調べた。25℃、20001x、白色蛍光灯連続照射条件下で静置培養を行い、藻類の増殖量を測定した。Microcystisの増殖制限物質は、EDTAまたはEDTA・リン・窒素であったが、EDTAのみの添加では増殖量は以前ほど認められず、利用可能なリン、窒素が減少しているのではないかと考えられた。さらに、合成キレート剤のEDTA(Na_2EDTA 2H_2O)およびNTA(Nitrilotriacetic acid)ならびに霞ヶ浦の底泥より分離した天然のキレート物質のフミン酸およびフルボ酸による、Microcystisの重金属毒性の抑制効果について明らかにするために、重金属を含む合成培地にキレート物質を添加し、Microcystisの増殖に及ぼす影響を調べた。Cd, Ni, WおよびZnは、低濃度でM.aeruginosa K-5の増殖を阻害したが、EDTA, NTA, フミン酸およびフルボ酸は重金属毒性の抑制効果を示した。フミン酸及びフルボ酸の同時添加は、K-5株の増殖の誘導期が短くなる効果を示した。キレート物質の重金属毒性の抑制効果はMicrocystisの種により異なっていた。
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