研究概要 |
分岐脂肪酸の蛍光性不斉識別試薬としてシクロヘキサン骨格を有する(1R,2R)-及び(1S,2S)-2-(2,3-Anthracenedicarboximido)cyclohexanol(2ACyclo-OH)を開発した。この試薬を用い、アキラルな逆相のODSカラムを用い-50℃から室温で分離を行うことにより、2位から12位に分岐を有するアンテイソ脂肪酸を全て2本のピークへと分離することができた。2位から6位に分岐を有する脂肪酸においては室温〜-10℃近辺に分離の至適温度が認められたが、これより遠隔位に分岐を有する場合は温度が低い程良好な分離が得られた。これらのピークは蛍光検出することによりfmolレベルの検出が可能で、天然物などの極微量の試料中の分岐脂肪酸の絶対配置決定法として非常に有効な方法となることが期待できた。2位から11位までに不斉分岐を有する分岐脂肪酸については、(1S,2S)型試薬を用いた場合、奇数位に分岐がある脂肪酸ではR体が先に溶出し、逆に偶数位に分岐を有する場合はS体が先に溶出するといった規則性が見い出された。渦鞭毛藻より単離構造決定された新規分岐脂肪酸を有するセラミドの分岐脂肪酸部のC15'位の不斉を、この脂肪酸を化学変換により12-メチルペンタデカン酸に導き、本法を適用することによりその未決定であった絶対配置をRと決定することができた。この誘導体化法は1H-NMR法への適用も可能で、12位までの分岐メチル基のケミカルシフト差(△δ=R体-S体)よりその不斉を識別することが可能であった。また、その符号にはHPLCと同様の規則性が見い出され、その符号から絶対配置の予測が可能であった。
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