研究概要 |
前年度(R,R)-及び(S,S)-2-(2,3-アントラセンジカルボキシイミド)シクロヘキサノールを用いた2位から12位に分岐を有するアンテイソ脂肪酸の不斉識別について報告したが、本年度は更に遠隔位に分岐不斉を有するアンテイソ脂肪酸について検討を行った。13位〜18位に分岐不斉を有する光学活性アンテイソ脂肪酸標品を合成し、(R,R)-及び(S,S)-試薬により誘導体化した後、アキラルな逆相カラムを用いたHPLC分析を行った。その結果、ODSカラムでは十分な分離が得られなかったが、C-30カラムを用い、移動相へTHFを添加し、-50〜-40℃の超低温条件下、低流速で溶出することによりいずれの脂肪酸も分離度1.25以上で分離することができた。また溶出順序には、前年度報告した2位〜11位に分岐を有する脂肪酸と逆の規則性が12位以降で認められた。 本分析法の天然物への展開として、広島大学の吉本らにより単離構想決定された新規グリセロ糖脂質S365Aに含まれる絶対配置未決定の12-メチルテトラデカン酸及び14-メチルヘキサデカン酸の絶対配置の決定に応用した。アルカリ加水分解により遊離脂肪酸とした後、(S,S)及び(R,R)-試薬により誘導体化した。30℃でC30カラムを用いた逆相HPLCにより目的フラクションを分画した後、不斉識別のための低温条件下での逆相HPLCを行った。標品との比較から各分岐脂肪酸の12位及び14位の絶対配置をいずれも(S)と決定する事ができた。
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