本研究期間において、細胞周期阻害活性物質であるピロネチン、プリュッシンとFR901464、また、脳神経保護物質カイトセファリンの類縁体を含めた合成研究を行った。それにより得られた知見は以下の通りである。 ピロネチンについては、ピロネチン自体及びその類縁体を合成し、ピロネチン分子のどの部分が活性発現に重要であるかが判った。また、合成類縁体を用いた研究によってどの様に微小管重合を阻害することによって細胞周期阻害活性が発現するかという機構がほぼ明らかになりつつある。 プリュッシンについてはそれ自体の立体選択的合成に加えて残り7つの立体異性体も合成した。大変興味深いことに、8異性体全てが同等の生物活性を有するという極めて珍しい現象が明らかになった。 FR901464はそのO-メチル体を合成することに成功した。合成したO-メチル体は、天然物に較べ、より安定であるばかりか、約5倍強い細胞周期阻害活性を示した。この類縁体は今後の応用研究・生化学的研究非常に大きく貢献すると期待される。 カイトセファリンについては新規に開発した反応を利用して立体選択的な全骨格の構築に成功したところである。カイトセファリン自体の合成の達成によって、まだ未確定なこのものの立体化学が明らかにされるであろうことはもちろん、本合成手法を用いることによりかなり柔軟に種々の類縁体合成が可能である。
|