平成13年度に行った研究の実績は以下の通りである。 まず、細胞周期阻害活性物質であるFR901464に関しては、前年度までにO-メチル体を得、それが天然物より活性が高いことを見いだしていたが、本年度、FR901464自体の全合成も達成した。また、その際得られた知見を元に、このものからビオチン標識した誘導体を合成した。それをプローブとして用いて、結合タンパク質の同定、作用機作の解明が行われ、かなりの部分が明らかになりつつある。 また、脳神経保護物質であるカイトセファリンについては、提出構造の立体選択的合成を行ったところ、天然物と一致しなかった。種々の類縁体、立体異性体の合成により、天然物の正しい立体化学を推定し、そのものの全合成を行ったところ、天然物と一致した。これによりカイトセファリンの絶対立体配置が明らかとなった。また、分子の一部を改変した類縁体を合成し、各種立体異性体とともに生物活性試験を行うことで、興味深い構造-活性相関が得られた。現在はカイトセファリンが結合するグルタミン酸レセプターを明らかにするためのプローブ作り並びにより単純で高活性な類縁体の創製を目指した合成研究を行っている。
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