海藻の性フェロモンの化学的研究は、古くから行われてきた。しかし、1971年になって海産褐藻シオミドロの性誘引物質としてエクトカルペン(1)の化学構造が海藻のみならず、藻類で初めて明らかにされた。それ以来、現在までに疎水性で揮発性の11のフェロモンが明らかになっている。ところが、これまで海産緑藻の性フェロモンについては、その存在すら明らかにされていなかった。昨年にはじめて、日本の富樫らによって緑藻ハネモの性フェロモン様誘引現象が報告された。 ここでは、ハネモなどの海産緑藻の新規な性フェロモンの化学構造を明らかにするために、ハネモの雌性と雄性配偶体を別個に、PES培地中で蛍光照射下18℃で培養・成熟誘導した。成熟誘導は配偶体の検鏡と、成熟誘導培養液のキャピラリー法、ビース法による雄性配偶子誘引活性測定を行った。雌性配偶体が成熟し、顕著な誘引活性を示したので、遠心して細胞を除き、雄性配偶子誘引活性を有する上清を得た。この上清を、100倍程度濃縮してFolch溶剤により脂質を除去後、逆相カラムクロマトによって精製を試みた。しかし、明確な雄性配偶子誘引活性を確認することは出来なかった。
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