研究概要 |
トロピノン還元酵素-II(TR-II)はトロピノンの3位のカルボニル基を還元してシュードトロピンを生成するNADPH酵素である。TR-IIによって触媒される反応においては還元反応の方が酸化反応に比べてかなり速いことが知られている。これまで我々はグルタチオン合成酵素を用いた時分割構造解析に取り組んできたが、今回はTR-IIの触媒反応機構解明を目指して時分割結晶解析を行うため、還元反応の基質であるNADPH、トロピノンとTR-IIのミハエリス複合体についてフローセルとラウエ法を用いて構造解析を行った。 リガンドであるNADPH、トロピノンを共存させながらハンギングドロップ蒸気拡散法を用いて結晶化を行い、TR-IIの基質複合体の結晶を得た。この場合の空間群はP6122で、格子定数はa=b=88.6,c=338.3であった。一方、フローセル(直径0.7mm)を用いて測定を行った場合、0.1M HEPES buffer,pH7.5,2.0M Li_2SO_4,4mM NADPH,110mM トロピノン,1mM DTT溶液を流速1mL/minでフローセル内に流した。ラウエ法によるデータ収集は、フォトンファクトリーのBL-18Bビームラインでイメージングプレートを用いて行われた。 TR-II結晶はその大きな格子定数にも関わらず良好なラウエパターンを与えた。2.5Å分解能までに156,212個の反射(I>σ(1))を含んだ7枚のイメージより、20,629個の独立は反射を得た。この時R_<merge>は9.4%であった。ラウエ法により得られたデータから差フーリエ解析により得た電子密度図は基質と補酵素の明瞭な電子密度を与えた。詳細な構造モデルについては現在さらに解析を進めている。
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