研究概要 |
トロパンアルカロイド生合成分岐経路の分岐点である反応を触媒するトロピノン還元酵素(TR)はNADPHを利用する酸化還元酵素であり、反応立体特異性の異なるTR-I,TR-IIの2種類が存在する。TR-IIへの基質の結合状態を明らかにすることを目的として、反応開始直前のTR-II―NADPH-tropinone複合体の構造を捉えようとTR-IIのフローセル法とラウエ法を組み合わせた時分割X線結晶構造解析を行った。 データの収集は高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーのビームラインBL18Bで大型イメージングプレートを用いて行い、予め調整したTR-II-NADPH複合体結晶、及びその結晶にフローセルを通じて4mM NADPH、100mM tropinone溶液を1ml/minで供給しながら測定したところ、両結晶について良好なラウエ回折像を得た。得られたデータをもとに活性部位の差フーリエ解析を行ったところ、トロピノン部分に有為な差の電子密度を得ることが出来た。また得られた3者複合体構造と先に得られたTR-II-NADP+-tropinone複合体の差フーリエ解析比較を行ったところ、やはり基質周囲に電子密度の変化が、認められ、反応直前において基質tropinoneが活性部位内で結合方向を変えていることを捉えることが出来た。この結合変化により、正反応におけるヒドリドイオンによる求核的な攻撃が起こるのに有利な位置となる要に基質の反応部位ならびに活性中心近傍のアミノ酸側鎖が配置されるものと考えられた。
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