研究概要 |
生体内の蛋白質は、固有の寿命を持ち代謝回転をしている。その長さは数週間から数分というように、極めて多様性に富んでいる。この蛋白質の寿命は選択的蛋白質分解によって決定されており、そのプロテアーゼの代表がカルパインである。情報伝達系の酵素を部分分解してこれらのモジュレーターとなる一方で、特定部位を切断してその蛋白質を分解系へ引き入れるという形で、寿命の制御に関与する。哺乳類では、組織普遍的に発現するμ-,m-カルパインと、組織特異的に発現するカルパインの2種が存在する。この中で、骨格筋特異的カルパインであるp94は、その異常により筋細胞の蛋白質分解が正常に制御できなくなり、筋原繊維の萎縮につながる。このようなカルパインの挙動を手がかりとして、蛋白質の寿命決定機構を解析し、骨格筋をモデル系とした蛋白質寿命の分子機構を解析した。まず、強力な自己消化活性によりin vitroでの寿命が10分以下という、p94の寿命の制御機構について解析した結果、1)in vivoではおそらくコネクチンによって分解が抑制されている、2)p94はドメイン構造をとるが、その中のIS1,IS2という領域が自己消化の制御に関与しており、これらの領域の一方でも欠失すると分解が抑制される、3)筋肉には、alternative splicingにより、IS1やIS2が欠失した形のp94も発現している、ことが判明した。次に、p94及び各筋蛋白質の量を定量して、p94の野生型やdominant negative型を大量発現させた筋芽細胞において、その筋分化過程への影響を観察した結果、分化促進が観察された。また、p94はIS1/IS2が分解シグナルになっていると考えられる。そこで、μ-,m-カルパインIS2を挿入してその寿命を解析した結果、わずかながら寿命が短くなることが観察された。さらに詳しい解析を継続したい。
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