国産小麦である農林61号から調製された分級粉では、一般的な組成分析である灰分量、蛋白量は外層部ほど多くなり、湿グルテン量、白度は逆に内層部ほど高い値を示したが、水分量については分級粉間で顕著な差は認められなかった。粒度分析では、100-70%の画分を除き全ての分級粉において通常に製粉された農林61号(N61)よりもパンのクラム粒径は大きくなった。澱粉損傷度の測定については、いずれの分級粉も通常の小麦粉よりも高い値を示した。ジアスターゼおよびプロテアーゼ活性は特に外層部で高い値を示した。また、製パン試験では分級粉単独の試料は、いずれもパンの比容積を低下させ、良好な製パン性を示さなかった。しかし、N61の一部を分級粉で代替すると、N61単独よりもパンの比容積は若干増加した。さらにへミセルラーゼの添加によりパンの膨らみは明らかに大きくなり、軟らかく、老化抑制効果がみられ、ガスセルの小さなキメの細かいパンとなった。なお、外国産の硬質小麦の分級粉についても、同様に検討したところ、一般的な組成分析や澱粉損傷度の結果は国産小麦と同じ傾向を示したが、酵素活性については、ジアスターゼおよびプロテアーゼ活性ともに特に内層部で高い値を示し、国産小麦とは異なる傾向であった。しかし、いずれの結果についても国産小麦より外国産小麦によって調製された分級粉の方が顕著に高い値を示し、製粉後強力粉となる硬質小麦の特徴が明らかに認められた。
|