研究課題/領域番号 |
11660132
|
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
舛重 正一 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (70078153)
|
研究分担者 |
梅原 泰祐 東京農業大学, 応用生物科学部, 助手
喜田 聡 東京農業大学, 農学部, 講師
|
キーワード | レチノイン酸 / 精子形成 / CREM / 転写調節 |
研究概要 |
精子形成過程で発現する転写調節因子は数多く知られているが、それぞれの役割、あるいは転写調節因子間の階層性の解析はほとんど行われていないのが現状である。また、ビタミンA(V.A)欠乏動物では、精子形成が精原細胞で停止し、レチノール投与により精子形成が再開されることから、レチノールが制御する作用点は明確である。一方、レチノールは生体内でレチノイン酸に代謝され、核内受容体に結合することで遺伝子発現を制御している。従って、精原細胞においてレチノイン酸によってその遺伝子発現が制御され、次段階の分化を亢進する転写調節因子が存在し、転写調節因子間のカスケードを形成することが予想され得る。そこで、本研究ではV.Aによって遺伝子発現が制御される転写因子を検索し、V.Aによる精子形成制御の分子メカニズムを転写因子の階層性の視点から解析することを目的として研究を進めた。まず、当研究室常法に従ってA欠乏ラットを作成し、A欠乏ラットにall-transレチノイン酸を500μg/kg投与し、4、8、16、24時間後の精巣よりRNAを調製し、Northern blot分析によりcAMP responsive element modulator(CREM)、CREMとファミリーを形成する転写調節因子ATF-1、精子形成過程で発現が観察されているHoX1aなどの転写調節因子群の発現量の解析を行った。レチノイン酸投与により、ATF-1のmRNAレベルは一定であったのに対して、CREM mRNAレベルの減少が観察された。さらに、CREMは選択的スプライシングにより正または負に働くアイソフォームが存在するために、RT-PCR法によりレチノイン酸投与により発現量が変化するアイソフォームの同定を行ったところ、活性型のアイソフォームの一つであるCREMτの発現が大きく増大されていることが明らかとなった。従って、精原細胞のレベルではCREMτの発現はレチノイン酸により負の制御を受けることが示唆された。現在、精巣においてレチノイン酸により誘導されるCREMτの発現レベルの減少の意義を解析し、さらに、ディファレンシャルスクリーニング方法を用いてレチノイン酸によって発現制御を受ける転写調節因子を中心とした標的遺伝子群の検索を進めている。
|