研究課題/領域番号 |
11660135
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 冬樹 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助教授 (20187230)
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研究分担者 |
柴田 英昭 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助手 (70281798)
野村 睦 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助手 (20271629)
笹 賀一郎 北海道大学, 農学部・附属演習林, 教授 (70125318)
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キーワード | 有機-無機複合体 / 水溶性有機物 / 溶存鉄 / 溶存アルミニウム / 融雪期 / 河川水 / 寒冷積雪地 / 森林流域 |
研究概要 |
北海道北部の森林流域における有機-無機複合体の生成状況について、北海道大学演習林内に地質の違いに応じていくつかの試験流域(天塩地方演習林:蛇紋岩、新第三紀硬質頁岩、雨龍地方演習林:安山岩)を設定し観測を継続した。 土壌浸透水中の溶存有機態炭素濃度(DOC)は0層やA層浸透水中で高いのに対し、C層浸透水の濃度は極めて低くなっていた。AlやFeなどの金属イオンは水溶性有機体炭素と類似した挙動を示し、土壌中における難移動性イオンである両イオンの動きについては有機-無機複合体の生成が重要であることが示唆された。なお、蛇紋岩の森林流域の土壌中ではFe濃度が下層浸透水中でも高く、土壌還元によるFeの溶出も考えられた。 河川水中のDOC濃度は、渇水期で低いのに対し、降雨時や融雪時などの増水期に濃度の上昇する傾向が見られた。濃度上昇の程度は透水係数の小さい蛇紋岩流域の森林で最も高く、透水係数の高い新第三紀硬質頁岩の流域で低かった(安山岩流域は両流域の中間であった)。このことより、流域土壌の透水性が低いほど降雨や融雪水が土壌深部に浸透しにくく、DOC濃度の高い土壌表層部で横方向の移動流を生じ河川に直接流入する機構が考えられた。河川水中のFeやAl濃度もDOCと同様の傾向を示し、河川水中の有機-無機複合体は土壌表層で生成された物質の直接流入により生ずることがわかった。 安山岩流域において融雪期の集中観測をおこなったところ、河川水中のDOC、Fe、Al濃度は融雪期に上昇するが、濃度のピークは流量ピークよりも早い時期に出現し、冬季間土壌表層で生成された有機-無機複合体が融雪初期に融雪水により河川水に押し出される機構の存在が推定された。
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