研究概要 |
落葉広葉樹二次林の天然下種更新について,更新目的樹種の実生定着を雑草木刈り払い後の再生との関連でとらえ,研究をおこなった. 1.光合成系生理1)雑草木再生葉の光合成系生理のストレス診断に,パルス変調蛍光測定が有効であった.日中の光合成量子収率の低下は,水分欠乏とリンクした強光阻害に起因しており,再生葉の水分・栄養条件が強光阻害に密接にかかわっていると考えた.2)高木種芽生えの子葉の光合成系確立について,発芽にともなう全N含有率とRubisco含有率の推移から検討した.子葉の光合成系は,発芽後の急速なN代謝を通して一気に確立されるが,安定した高活性期間はなく,他器官へのNの転流の進行により早くから活性低下が始まった.そこでは,土壌の栄養状態がN含有率を通して子葉の光合成活性に密接に関係していた. 2.低木種の栄養繁殖型落葉広葉樹林伐採跡地に出現する低木7種の実生について,地下部を掘り出し,地下器官による栄養繁殖状態を調べた.4つの繁殖型,すなわち単茎型,株型,横走根型,地下系型が認められた.地下茎型に次いで横走根型が,速やかに,かつ高い現存量密度で空間を占有できることから,これら2つの型が高木種実生の最も手強い競合相手になると考えた. 3.雑草木制御のための機械地床処理天然下種更新の地拵えとして,小型掘削機による地床処理をおこない,雑草木植生の再生への影響について検討した.再生過程にあって,機械地床処理は,初め一時的に低植被状態にし,ササ類の繁茂を1年遅らせ,木本類の繁茂を抑制した.これら3つの効果のうち,最初の低植被状態にする効果が目的樹種の実生の定着に最も貢献すると考えた.
|